【第9回】「○種類配合!」だけで選ばないで
前回は、原材料表示の「順番」に込められた意味についてお話ししました。今日は、そこからさらに一歩踏み込んで、「〇種類配合!」という言葉そのものと、どう向き合えばよいかを考えてみたいと思います。
「種類の多さ」に惹かれる心理
健康茶や健康食品のパッケージを見ていると、「10種類配合」「15種類のスーパーフード」「20種類の野草をブレンド」といった表現に、よく出会います。
こうした表現を見たとき、多くの方が抱く感覚は、おそらく「たくさん入っているなら、それだけ効果が期待できそう」「種類が多いほど、体に良さそう」というものではないでしょうか。私自身も、以前はまさにそう感じていました。
これは、決しておかしな感覚ではありません。人は本能的に、「多い」「豊富」という言葉に、価値や豊かさを感じやすい性質を持っています。マーケティングの世界でも、「〇種類配合」という表現は、商品の魅力を伝えるための、ごく一般的な手法のひとつです。書店に並ぶ雑誌の特集や、通販番組の説明などでも、「〇種類の栄養素」「〇種類の美容成分」といった表現は、頻繁に目にする表現方法だと思います。
なぜ「種類の多さ」が、必ずしも良さにつながらないのか
けれど、これまでの回でお話ししてきたように、原材料表示は重量順に記載されるというルールがあります。つまり、「〇種類配合」という言葉だけでは、それぞれの素材がどれくらいの量、どのような考えで配合されているのかは分かりません。
さらに言えば、素材の種類を増やすこと自体は、実はそれほど難しいことではありません。極端な話、香りづけ程度のごく微量な素材を追加していけば、原材料の種類数を増やすことは可能です。もちろん、そうした商品設計を否定するつもりはありません。多くの素材の風味を少しずつ楽しめるという魅力も、ひとつの価値だと思います。
ただ、大切なのは、「種類の多さ」が、そのまま「一つひとつの素材をしっかり摂れる」ということを意味するわけではない、という点です。この違いを理解したうえで商品を選ぶことが、納得のいく買い物につながると、私は考えています。
よくある誤解:「入っている」と「しっかり摂れる」は違う
ここで、もうひとつの大切な誤解についてお話ししたいと思います。
原材料表示に素材名が記載されているということは、その素材が「使用されている」ことの証明にはなります。けれど、それが「その素材の特徴を、しっかり感じられるだけの量が入っている」ということの証明には、必ずしもなりません。
たとえば、「ドクダミ配合」と書かれていても、ドクダミの配合量がごくわずかであれば、期待していたような風味や特徴を感じにくいかもしれません。逆に、素材数が少なくても、それぞれがしっかりとした量で配合されていれば、一つひとつの素材の個性を、より感じやすくなる可能性があります。
「配合されているかどうか」と、「どれだけの量、配合されているか」。この2つを、意識的に分けて考える視点を持つことが、今日いちばんお伝えしたいポイントです。
「豪華に見せる」表現の工夫について
少し視点を変えて、作り手側の事情にも触れておきたいと思います。健康食品業界では、限られた原価の中で、いかに魅力的な商品に見せるかという工夫が、日々行われています。その工夫のひとつが、「主原料をベースにしながら、香りや個性を加える少量の素材を、複数組み合わせる」という設計です。
これ自体は、決して悪いことではありません。少量であっても、その素材が持つ香りや風味は、商品全体の印象に影響を与えます。「ごく少量だから、まったく意味がない」というわけでもないのです。
ただ、消費者である私たちが知っておきたいのは、「その少量の素材に、どのような効果を期待するかは、慎重に考えたほうがよい」ということです。風味づけとしての役割と、しっかりとした量を摂ることで感じられる特徴とは、性質が異なります。この違いを理解したうえで、自分が何を求めて商品を選んでいるのかを、あらためて考えてみることをおすすめします。
パッケージの見せ方と、中身の設計は、別のもの
誤解のないようにお伝えしたいのですが、私は「〇種類配合」という表現を使うメーカーが、消費者を騙そうとしていると言いたいわけではありません。多くの場合、それは商品の魅力を伝えるための、ごく一般的な表現方法です。
ただ、パッケージの「見せ方」と、実際の「中身の設計」は、別の視点で捉える必要がある、ということをお伝えしたいのです。パッケージの表側にある大きなキャッチコピーだけで判断するのではなく、裏側の原材料表示にも目を通すことで、その商品が本当はどのような設計になっているのかを、自分自身で確認することができます。
私自身が商品を選ぶときに意識していること
私自身、健康茶や健康食品を選ぶときには、「〇種類配合」という言葉よりも、まず原材料表示の最初の数個を確認するようにしています。そこに、自分が本当に摂りたいと思っている素材が、上位に来ているかどうか。それを、ひとつの判断基準にしています。
もちろん、すべての商品についてここまで細かく確認するのは、現実的ではないかもしれません。けれど、「本当に大切にしたい素材」がある商品については、この視点を持つだけで、選び方が大きく変わってくると思います。
私は仕事柄、さまざまな健康茶のパッケージや原材料表示を見る機会がありますが、原材料表示をきちんと確認するようになってから、「このパッケージは、何を主役にしたい商品なのだろう」という視点で商品を眺められるようになりました。それは、良し悪しを決めつけるためではなく、自分の目的に合った商品を選ぶための、ひとつの物差しとして役立っています。
今日からできる、小さな一歩
- 「〇種類配合」と書かれた商品を見たら、原材料表示の最初の数個を確認してみる
- 自分が本当に摂りたい素材が、表示の何番目にあるかを確認してみる
- 「種類の多さ」と「一つひとつの量」は別の話だと、意識してみる
香詩乃が「種類の多さ」を追いかけない理由
香詩乃のクリアバランス茶は、あえて5つの素材に絞っています。世の中には、10種類、20種類という多くの素材を配合した健康茶もたくさんありますが、私は素材数の多さを競うことよりも、選んだ5つの素材、明日葉、ドクダミ、イチョウ葉、ゴボウ、ハトムギを、一つひとつしっかりと感じられる形でお届けしたいと考えています。
なぜ「均等に近いバランス」で配合しているのか。この考え方については、次回のテーマで、じっくりとお話ししていきたいと思います。
おわりに
今日は、「〇種類配合!」という言葉との向き合い方についてお話ししました。種類の多さに惹かれる気持ちは、決して間違っていません。けれど、その言葉の裏側にある原材料表示にも目を向けることで、より納得のいく商品選びができるようになると思います。
次回は「5種類配合=5種類同じ量ではありません」というテーマで、この視点をさらに具体的に掘り下げていきます。
【参考資料・出典】
- 消費者庁「食品表示基準」(原材料名の表示方法、重量順表示のルール)
※本記事の内容は、原材料表示に関する一般的な知識の共有を目的としており、特定の商品や事業者を批判・誹謗するものではありません。
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