【第6回】「無添加」と書いてあれば安心?表示の見方

前回は、私自身のアトピーの経験についてお話ししました。今日は再び、原材料表示の話に戻りたいと思います。テーマは「無添加」という表示についてです。

パッケージの「無添加」、どこまで信じていますか

スーパーやドラッグストアで、大きく「無添加」と書かれたパッケージを見ると、なんとなく安心してしまう。そんな経験はありませんか。私自身も、以前はそうでした。棚に並んだ商品を選ぶとき、忙しい毎日の中で、パッケージの大きな文字だけを頼りに手に取ってしまうことは、決して珍しいことではないと思います。それだけ「無添加」という言葉には、私たちの気持ちを動かす力があるということでもあります。

けれど、「無添加」という言葉には、実はかなり注意が必要だということを、みなさんはご存知でしょうか。今日は、この「無添加」という表示の見方について、できるだけ具体的にお話ししていきたいと思います。

「無添加」表示にルールができた理由

実は、2022年3月まで、「無添加」「不使用」という表示について、明確な統一ルールはありませんでした。何を基準に「無添加」と名乗るかは、各メーカーの判断に委ねられていたのです。その結果、メーカーによって基準がバラバラだったり、消費者が誤解しやすい表示があったりと、以前から問題が指摘されていました。

こうした状況を受けて、消費者庁は2022年3月30日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定しました。事業者には、パッケージやラベルの見直しのための移行期間として2年間が設けられ、2024年3月末までに、このガイドラインに沿った表示への変更が求められることになりました。

ここで大切な誤解を解いておきたいのですが、SNSなどでは「無添加表示が禁止された」という投稿も見られましたが、これは正確ではありません。「無添加」「添加物不使用」という表示そのものが禁止されたわけではなく、消費者に誤解や誤認を与えるような表示の仕方に、注意が求められるようになった、というのが正確なところです。実際に添加物が使用されていないのであれば、「無添加」「不使用」と表示すること自体には、問題はないとされています。

注意すべき10の類型

このガイドラインでは、注意すべき表示のパターンが、10の類型に整理されています。ここでは、特に知っておいていただきたいものをいくつかご紹介します。

類型1:単なる「無添加」の表示 何が無添加なのか対象が書かれていない、「無添加」という言葉だけの表示です。これでは、すべての添加物が一切使われていないかのような誤解を与えかねません。

類型4:同一機能・類似機能を持つ添加物を使用した食品への表示 たとえば、「保存料不使用」と書かれていても、実際には別の種類の保存効果を持つ添加物(pH調整剤など)が使われている場合があります。この場合、「保存料は使っていないけれど、似た働きをするものは使っている」ということになり、消費者の受け取り方とずれが生じる可能性があります。

類型8:添加物の使用が予期されていない食品への表示 たとえば、もともと着色料が使われることが少ないミネラルウォーターに「着色料不使用」と書くようなケースです。もともと使われていないことが当たり前のものに、あえて「不使用」と表示することで、あたかも特別な配慮をしているかのように見せてしまう可能性があります。

類型10:過度に強調された表示 パッケージのあらゆる箇所に、大きく「無添加」「不使用」と表示し、目立たせすぎているケースです。強調のしかたによっては、実際の内容以上に「安心・安全」を印象づけてしまうことがあります。

類型6:健康、安全と関連付ける表示 「無添加だから健康に良い」「不使用だから安全」というように、無添加であることと、健康や安全性を直接結びつけて強調する表示です。添加物を使っていないことと、その食品が健康に良いかどうかは、本来別の問題です。無添加であっても、糖分や脂質が多い食品もあれば、添加物が使われていても、栄養バランスの取れた食品もあります。この結びつけ方には、慎重であるべきだとされています。

類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示 たとえば「合成着色料不使用」とうたいながら、天然由来の着色料を使って似たような発色効果を出しているケースです。「合成」という言葉だけを避けているだけで、色をつけるという行為自体は行われている、という点に注意が必要です。

このように整理してみると、「無添加」という言葉ひとつをとっても、表示の仕方によって受け取られ方が大きく変わることが分かります。

よくある誤解:「無添加=何も入っていない」ではない

もうひとつ、大切な誤解を解いておきたいと思います。「無添加」という表示は、あくまで「特定の添加物を使用していない」ということを示すものであり、「原材料が何も入っていない」という意味ではありません。

たとえば「保存料無添加」の食品であっても、糖分や塩分が多く含まれていたり、原材料そのものが加工度の高いものであったりすることもあります。「無添加」という言葉だけで判断せず、原材料表示全体に目を通すことが、本当の意味での「知ったうえで選ぶ」ということだと、私は考えています。

私自身が心がけている表示の見方

このガイドラインについて学んだことで、私自身、商品づくりにおいても、表示のしかたにはより一層、慎重でありたいと感じるようになりました。パッケージに大きく「無添加」と書くことで、一瞬で安心感を伝えられることは分かっています。けれど、その安心感が、正確な情報に基づいたものでなければ、それは長い目で見て、お客様との信頼関係を損なうことにつながると私は考えています。

香詩乃としても、「無添加」という言葉を安易に強調表示として使うのではなく、原材料そのものが持つ特徴を、できるだけ具体的にお伝えすることを大切にしたいと考えています。「何が入っていないか」よりも、「何が、どのように入っているか」を丁寧にお伝えする。それが、私にとっての誠実な情報発信だと思っています。

今日からできる、小さな一歩

  • 「無添加」と書かれた商品を見たら、「何が無添加なのか」を確認してみる
  • 「無添加」の文字の大きさや目立ち方にも、少し注意を向けてみる
  • 「無添加」だけでなく、原材料表示欄全体にも目を通す習慣をつける

おわりに

「無添加」という言葉は、決して悪いものではありません。むしろ、事業者が原材料にこだわって商品をつくっているという、ひとつの誠実な意思表示でもあります。大切なのは、その言葉だけを鵜呑みにするのではなく、「何に対しての無添加なのか」を確認する視点を持つことです。それだけで、食品選びはより確かなものになっていくと思います。

次回は「原材料表示、ちゃんと見ていますか?」というテーマで、原材料表示そのものの読み方について、さらに詳しくお話ししていきます。


【参考資料・出典】


  • 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(令和4年3月30日)
  • 消費者庁「表示を作成する際に注意すべき10類型」

※本ガイドラインの内容は今後も改訂・運用の見直しが行われる可能性があります。最新の情報は、消費者庁の公式サイトでご確認ください。




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